●5月の薬局ディスプレイ 「ドクター・レスラーのホーフ・アポテーケ」バーデン・バーデン
*Dr. Rössler‘s Hofapotheke
バーデン・バーデンはドイツ屈指の高級療養地です。温泉は既に紀元前に発見され、植民地を北に広げていった古代ローマ帝国の兵士たちも、ここで旅の疲れを癒しました。現在でも65度の温泉が沸いています。19世紀前半に、フランスの宮殿の間を再現したカジノが付け加わり、王侯貴族をはじめとして上流階級が集うようになり、『ヨーロッパの夏の首都』と呼ばれるようになりました。
そのバーデン・バーデンにあるドクター・レスラーのホーフ(宮廷)薬局は175年を越える歴史のある薬局です。丁度カジノが置かれたクアハウスが建てられたすぐ後の1838年に、フランス人建築家によってアンピール様式(ナポレオン1世の帝政様式)で店舗がデザインされたということです。今回の薬局ディスプレイでは、月々で変わるものではなく、その美しさに心を奪われる、家具、床、薬瓶をご覧になっていただきます。現代のパッケージ薬や化粧品を並べると、なんともアンバランスですが、この薬局が持つ歴史に惹かれてここに来る方も少なくないのではないかと思います。(ドイツ在住・中村典子)