●イタリア●フィレンツェ・世界最古の薬局“サンタ・マリア・ノヴェラ薬局”(城戸まゆみ)
*薬局の正式名はOfficina Profumo-Farmaceutica di
Santa Maria Novellla
いよいよ世界最古の薬局と称される“サンタ・マリア・ノヴェラ薬局”へ。伝統ある薬局の、その入り口はひっそりと目立たない。「どこかしら?」と思いつつ歩いていると、独特な趣のあるの香りが・・・。その香りを辿るようにして見つけた扉を開けると、大理石の床とアーチ型の高い天井のエントランスホール、そしてハーブ特有のいい香りに包まれます。どっしりと重い大きな扉を開けるとさすがです。メディチ家を始め、ヨーロッパの王族、貴族たちを顧客としてきた薬局の伝統と威厳。ゴシック様式の天井には4大陸の人物を表現したフレスコ画が描かれており、この薬局が世界を代表する薬局の一つであることを讃えています。
*薬局の高い天井を思わず見上げると
アーチ型の天井に4大陸の人物が描かれている
1220年頃、フィレンツェにやってきたドミニコ会修道士が、修道院の庭で数々の薬草を栽培し薬を調合したのが、この薬局の事始めです。カトリック時代のヨーロッパではどの修道院も農業や医学など、それぞれ得意な分野を持ち、高い技術と知識を持っていたといいます。サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局が得意としたものは、薬効のある水やリキュール、そして香水や石鹸、クリームなど。修道院として400年ほどの診療活動を続けた1612年、サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局は正式に薬局としての創業を認められます。その後も薬草製品の研究は続けられ、世界中にその名は広まっていきます。
薬局創業当初から1848年まで使われた旧薬局室(現名称「エルボステリア」)が、薬局の歴史を伝えようと1995年から一般公開されています。緑の芝の中庭に面したその部屋には、当時のハーブ商品や万能薬と称された薬草リキュールなど、貴重な歴史ある製品を観たり、購入したりすることができます。
*右上/初代薬局長フラ・アンジャロ・マルキッシ(15921659)聖職者でありながら植物学者、科学者として研究所の名声をあげた
左上/当時のトスカーナ大公フェルディナンドⅡ世(メディチ家当主)から初代薬局長フラ・アンジェロ・マルキッシに贈られた聖ピエトロの肖像画
額縁はメディチ家の薬玉の家紋と薬局のシンボルである蛇をモチーフしている
*代々の薬局長の肖像画が飾られた部屋
ヨーロッパの時代の荒波を乗り越えてきた
薬局の歴史が感じられる