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2007年05月07日

●イタリア・ドイツ●医学、薬学のシンボル(吉岡ゆうこ)

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    *ローマ・トレビの泉

欧米では医学、薬学のシンボルとしてアスクレピオスの杖とヒギエイアの杯が使われています。
医学のシンボルとして、欧米では古くから「アスクレピオスの杖」が用いられ、その杖には一匹の蛇がからまり、健康、不老、長寿などを象徴しています。薬学のシンボルとしては「ヒギエイアの杯」が最も多く用いられていますが、乳鉢乳棒、天秤、アスクレピオスの杖なども用いられています。

<アスクレピオス>
アスクレピオスはギリシアの英雄で医術の祖であり、のちに神としてまつられました。ギリシャ神話のアポロンとコロニスの子とされています。人に治療や薬事の技術を伝授し、医術に長じ、慕ってくる患者のために神殿を建てました(アスクレピオス神殿)。これが最初の病院と言われるものです。地上のすべてを知るヘビに学んだ薬草や催眠法を用いて病人を治癒しました。妻エピオネとの間に四人の娘を持ち、パナケイアPanakeia、アケソーAkeso、ヒギエイアHygieia、イアソーIasoといい、いずれも健康、治癒などの意味があります。彼は病人の診療で山野を歩き回るとき、丈夫な太い棒を杖として用いました。 その杖はカドゥケウスとよばれその杖には1匹の聖蛇がまきついています。蛇は守護、魔力、神秘、健康、不老、長寿、不死などを象徴しています。患者の患部を蛇がなめるとその魔力で病気が治ったといいます。カドゥケウスの杖とその杖からみついたヘビのマークはWHOのマークでもあります。欧米では救急車の車体マークにもなっています。

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*イタリア救急車のマークに使われている
 カドゥケウスの杖とヘビ

<アスクレピオスヘビとヒギエイアの杯>
アスクレピオスヘビは、古代ギリシア人やローマ人が神をたたえて建立した病院をかねた神殿で飼育されていました。娘であるヒギエイアは父からの信頼が厚く、聖蛇に餌を与える役を担っていました。ヒギエイアがヘビに餌を与えるときの杯を「ヒギエイアの杯」と称します。

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*左/ドイツの薬局のドアノブ
 右/ドイツの薬局の看板~マークはApoteke(アポテーカ:薬局)のAとヒギエイアの杯とアスクレピオスヘビです。

イタリアの薬局では十字のマークとヒギエイアの杯を組み合わせた看板を利用しています。そしてイタリアの薬剤師さんは胸に薬剤師バッジをつけていたのですが、そのバッジの模様はカドゥケウスの杖とアスクレピオスヘビです。
イタリアのトレビの泉はとても有名ですので、テレビや写真でごらんになったことがあると思うのですが、その正面右手に建っている彫像の一つがヒギエイアです。確かにヒギエイアの杯をもち、そこにヘビが巻き付いていました。
(ドイツ2005年2月/イタリア2006年8月取材)

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    *"トレビの泉"のヒギエイア像
     ヒギエイアの杯とからみつくヘビ